スタートアップとしてトライし続けるための原動力

株式会社マチルダ   Co-Founder CEO 丸山由佳さん(右)   Co-Founder CCO 福沢悠月さん(左)
株式会社マチルダ   Co-Founder CEO 丸山由佳さん(右)  Co-Founder CCO 福沢悠月さん(左)

会社概要

株式会社マチルダ

2021年1月設立。「こどもが無邪気でいられる社会を創る」をミッションに掲げ、家庭料理のテイクアウトステーション「マチルダ」を運営。東京都内を中心に29ステーションを展開する(2025年3月現在)。「Tokyo Metro ACCELERATOR」採択を経て、2023年3月に半蔵門線清澄白河駅にステーションを設置。同年10月、東京メトロが出資。

https://matilda.kitchen

 


2023年10月、スタートアップ企業・マチルダがシリーズAラウンドとして約3.5億円の資金調達を行い、8社が資金を提供。そのうちの1社が東京メトロだ。2021年度の「Tokyo Metro ACCELERATOR」採択から出資に至るまで、そしてこれからを、Co-Founder CEOの丸山由佳さん、Co-Founder CCOの福沢悠月さんと語り合った。

 

〈聞き手:東京メトロ企業価値創造部 和田孝介・森信治〉 

「東京メトロ沿線を地域の夜ご飯の受け渡し場所にアップデート」

丸山:私たちがTokyo Metro ACCELERATORに応募したのは、創業した2021年なんです。

 

福沢:締切まで1週間しかないけどどうする?って。すごくギリギリに(笑)。

 

和田:その年は168件応募がありましたね。採択されたのがマチルダさんを含めて3件。

 

森:アクセラレーターでは、最終審査の役員プレゼンに向けて、担当社員が付いて準備を進めるんですよね。

 

丸山:その担当の方がすごく熱意があって「家庭料理のテイクアウト、いいサービスですよね!」って言ってくださって。「いけるっしょ」みたいな感じの方で、どんどん進めてくれて、楽しかったですね。プレゼンのときもその方の提案で私たちのメニューを持っていきました。

 

和田:電子レンジで温めましたね。たしかに実際に味わったことも採択につながった要因のひとつかもしれません。

 

福沢:マチルダを採択してくださったのは、どうしてだったんですか?

 

和田:最初から事務局のメンバーの評判が良くて、とくに女性社員はすごく共感していましたね。

 

森:最終審査の役員には、沿線価値向上という文脈での親子向けサービスであることが刺さったんだと思います。マチルダさんはなぜ応募を?

 

丸山:私たちが事業を始めたのは勝どきと豊洲で、最初のキッチンがあったのも江東区。東京の東側から事業を展開していくときに東京メトロさんの路線網は魅力的だったんです。

 

福沢:それに、マチルダが目指すのは子育て家庭の生活のインフラになることなんです。その点で東京のインフラであるメトロさんとぜひ共創できたらと思ったんですよね。

 

丸山:プレゼンでは「東京メトロ沿線を地域の夜ご飯の受け渡し場所にアップデート」って。

 

森:刺さるんですよ、そういうのが(笑)。

 

和田:ステーションの設置場所を探しはじめたのが採択後の翌年からでしたね。東京メトロの自社用地をすべて洗い出して候補地を絞り込んで、現地を視察して。

 

丸山:マチルダの事業に向いているのって、たとえば再開発地域のような、子育て家庭が多くて生活環境がまだ充実していないエリアなんです。それで悩みに悩んで、最終的に清澄白河駅で3か月間の実証実験を行うことになりました。

 

福沢:最初の1週間、東京メトロの皆さんが応援に来てくださったんですよ。一緒にエプロンを着けて、寒い中チラシを配って。それまでは自分たちだけだったから、同じ熱意で一緒にやってもらえたことにちょっと感動しました。実証実験後に継続が決まってからも、すごく協力的に動いてくださって。

 

和田:タープ問題ですね。安全面を担保しないとという話になって、コンテナの業者を一緒に探しましたね。

 

丸山:実はコンテナ型のステーションって、清澄白河だけなんです。そういう試行錯誤ができるのはパートナーシップあってこそ。そもそも駅にステーションを出すのも初めてでしたから。清澄白河は今でもずっと伸び続けていますね。

同じマインドを共有しているからこそのコラボレーション

森:出資したのは2023年10月でしたよね。アクセラレーターの最終審査のときから、出資の話はポロポロと出ていましたが。

 

丸山:私たちが資金調達を始めて、少ししてから東京メトロさんにお声がけしたんです。というのも、私たちとしては大企業ですし難しいのかなと勝手に思っていたんですよ。でも、もしかしたらと思ってご連絡したら、ものすごいスピードで進めてくださって。スタートアップはもう本当に資金との闘いですから、ありがたかったですね。

 

福沢:2か月くらいとかで出資を決めてくだって、ものすごく早かったですよね。社内調整や稟議もあって時間が掛かるだろうと思いきや。

 

丸山:こっちは書類を提出するのもモタモタしているのに(笑)。

 

和田:私たちとしても、今後も協業していくならそういう形で一緒にやっていけるといいなと思っていたんですよ。いいタイミングでお声がけいただいて。

 

森:そもそも出資の話は役員もしていましたから、反対する人はいませんでしたね。

 

福沢:スピード感をもって進めてくださるのは本当にありがたいんです。とくに資金調達中はやることが多くて追われていますから。

 

福沢:出資後、協業に関する動画広告を車内ビジョンに流してくださったんですが、これがお客様からの反響がすごくて。

 

丸山:個人的にも友人からたくさん連絡がありました。それに、スタッフのロイヤリティも上がったんです。自分が働いている会社が東京メトロの車内ビジョンに映ったら、うれしいじゃないですか。

 

福沢:スタートアップには広告を出すような余裕はないし、しかも広告ではなくパートナーとしての露出だから、余計に。

 

丸山:ステーションの近くの駅にポスターを貼ってくださったりもして、大変ありがたいです。こちらからお願いがあるときにスッと動いてくださるというか。

 

福沢:めくれたポスターを和田さんが貼り直してくださったり(笑)。出資前も出資後も一貫して、皆さんが一緒に手足を動かしてくださるんですよね。ただお金を出すだけじゃなく、同じ気持ちで事業を伸ばそうとしてくださる姿勢がうれしいですね。

 

和田:アクセラレーターからご一緒しているということも大きいかもしれませんね。それに、私たちではできないことだからこそ、マチルダさんに出資しているわけですから。

 

森:そうですね。すぐに結果を求めるなら大きい企業と組めばいいのであって、マチルダさんとご一緒しているのは、熱量がある人たちと新しいことを始めたいから。余計な口出しをすると、むしろマイナスかもしれないですし。

互いのビジョンが重なり、次の展開が広がっていく

丸山:ちなみに私、株主に東京メトロさんがいることを、あらゆるところで話しているんですよ。なんか、すみません(笑)。

 

福沢:私もです(笑)。

 

丸山:なんでかというと、マチルダが何を目指しているのかが伝わりやすいからなんです。メトロさんが入っていると、“地域の夜ご飯の受け渡し場所になる”というストーリーにすごく納得感が出るんですよね。

 

和田:それはあるかもしれませんね。私たちからしても、子育て世帯が暮らしやすくなることが沿線価値の向上につながっているわけですから。

 

森:まさにそういう企業が、東京メトロにとって投資先として魅力なんです。おふたりが言ってくださったように、鉄道インフラだけではなく、生活のインフラになっていこうという意識が強くありますから。

 

和田:社内でも「マチルダが広がっているね」と話題になったりしますよ。自分も使いたいっていう社員も多いですし。

 

森:今後はどんな展開を考えているんですか?

 

福沢:まずは、都内を中心にまだまだステーションを展開していきたいです。エリアはいろいろと考えていて、もちろん清澄白河以外の駅でも。最寄り駅の改札前で受け取れたら、すごくいいですよね。

 

丸山:最近は、マチルダのスタッフがお渡しするのではなく、地域の飲食店やマンション施設の方にお渡しいただくような「非直営型ステーション」にもトライしています。同じように、駅のスタッフの方からお渡ししていただくようなことができたら。清澄白河ステーションが直営で、近隣駅にミニステーションを置いて……。

 

福沢:もしそれができたら、清澄白河に届けて、地下鉄でミニステーションに配送してくれたら最高ですね(笑)。

 

和田:それは新しいですね(笑)。あとは、子どもって電車が好きだから、そういう点でも相性が良さそうですよね。

 

丸山:地下鉄博物館も子どもに人気ですもんね。マチルダの強みは、子育て家庭とのリアルな接点があるということなんです。ステーションも、できるだけ子育て家庭の動線上に置いて、たくさんの子どもたちに来てほしくて。実際にキッズ向けのイベントもやっていて、子どもたちの食体験としてサービスを届けたいという気持ちは強いんですよね。

東京メトロさんと一緒に、地域の子育て世帯に幅広く届けられたら嬉しいです!!